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富山市立富山市民病院
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診療各科・各部のご案内

各科専門外来の設置や集中治療室をはじめ、
高度管理治療室を整備し技術向上に努めます。

各科のご案内

乳腺外科

乳腺外科では、乳房の診察・検査および治療を行っています。乳房にしこりを触れる、痛みを感じる、乳頭から分泌物がでるなどの症状がある場合には、自己判断せずに受診してください。
外来診療時間
診療時間
9:00~12:00 診察 診察 診察 診察 診察
13:30~14:30 × × × 乳腺外来 ×
乳腺外科では、月曜日から金曜日(祭日を除く)の午前中に診療を行っています。また毎週木曜日の午後から専門外来で診療を行っています。これは予約制の外来ですので、初診の方は事前に外来に電話予約をお願いいたします。
乳がんは年々ふえています
日本の乳がんの発生頻度は欧米にくらべると1/3程度ですが、その増加傾向は著しく、25年前の約2. 5倍になっており、このまま増加すれば次の25年間で欧米の水準近くに達すると考えられています。現在、日本の女性のがんの中で、乳がんの頻度は胃がんを追い越して第1位となり、毎年4万人の人が新たに乳がんにかかっています。日本人女性における乳がんの発生は、30歳代後半から増加をはじめ、40歳代後半にピークがあり、70歳を過ぎてもそれほど減りません。欧米では乳がんの発生頻度はゆるやかに増加を続けていますが、乳がんによる死亡率は1990年代前半から減少に転じています。対して日本では、依然、乳がんによる死亡率の増加が続いています。欧米での死亡率低下の要因に関しては、マンモグラフィ検診による乳がんの早期発見が重要な役割を果たしていると考えられています。乳がんも他のがんと同様に早期発見・早期治療が重要な病気なのです。当院には乳がんをはじめとする乳房の病気を診断・治療するための診断装置や、外科・放射線科・形成外科・病理科などの治療スタッフがすべてそろっています。乳房に異常を認めたときには、ためらわずに外来を受診してください。

診療実績(平成10-14年の統計)

当院における平成10-14年の乳がん手術症例は214例(1年平均42.8例)で、年齢は23歳から92歳まで、平均年齢は58.9歳です。年代別では50歳代が最も多く、40~60代の症例が全体の約70%を占めています。乳がんと診断されるきっかけとなった動機別(発見動機)では、乳房内の腫瘤(しこり)を自覚されたものが76.1%と最も多く、つぎはマンモグラフィにより発見されたものが13.6%でした。これを年次別でみると、しだいに乳房内の腫瘤を認めて来院される人の割合が減少し、マンモグラフィで発見される割合が高くなってきているのがうかがえます。マンモグラフィ併用乳がん検診の実施にともなう早期発見の成果と考えられます。乳がんの進行度(病期分類)は0期から4期に分けられますが、病期別症例数では、2期が42.1%と最も多く、ついで1期が41.1%の順となりますが、これも年次別の推移をみると0期(非浸潤がん)の割合が高くなってきており、マンモグラフィやマンモトーム生検が早期発見に役立っているものと思われます。乳がんの手術術式では近年乳房温存療法が多くなってきていますが、当院での平成10-14年の乳房温存療法施行率は56.1%で、年々増加する傾向にあり、平成14年は63.5%となっています。また当院では、乳がんの手術後、希望をされた方に乳房再建も行っていますが、平成10-14年に乳房再建を行った症例は17例(7.9%)で、広背筋皮弁が13例、腹直筋皮弁が4例でした。

乳がんの症状

乳房にしこりを触れる(腫瘤触知)
乳がんと診断されるきっかけとして最も多いのが腫瘤触知です。約8割の方が乳房に腫瘤を触れることがきっかけで受診されます。一般に乳がんのしこりは硬く、ごつごつしていて、痛みがないのが特徴です。ただ一般的な特徴であり、以前は触らなかったしこりを感じた時には自己判断せず外来を受診してください。
乳頭症状
乳頭症状には、乳頭異常分泌や乳頭・乳輪部のびらんがあります。授乳終了後には数ヶ月は乳汁の分泌がみられますが、次第にでなくなってきます。この場合、でてくる乳汁の色は、白色から少し黄色みをおびた透明な液のことがほとんどです。乳汁の色が血液の混ざった赤色であったり、血液が古くなった黒色の分泌物を認める場合には注意が必要です。また乳がんの特殊な病気にパジェット病があります。この病気では、乳頭・乳輪部の皮膚に湿疹様の変化を認めます。痛みやかゆみはあまりありませんが、ひどくなると乳頭が平たくなってびらんを認めることがあります。
皮膚のひきつれ(くぼみ)
乳房の中にがんができると、がんがまわりの組織をまきこんで皮膚にくぼみができることがあります。これを“えくぼ症状”といいます。
その他
症状がなくても乳がんが見つけられることがあります。特にマンモグラフィや超音波検査で発見される乳がんが増えてきています。40歳以上の方には1年に1回、このような検査を受けることをお勧めいたします。また、40歳未満でも、とくに家系内に複数の乳がん患者さんがいらっしゃる女性の方には、専門医による定期検診をお勧めいたします。

乳腺の検査

乳腺の病変発見のためには、マンモグラフィ(乳房X線撮影)と超音波(エコー)検査の2つが重要です。その他、必要に応じてMRI検査(MRマンモグラフィ)や乳管造影などを行うことがあります。また、それら画像検査で発見された病変が良性であるか悪性であるかを判断するために細胞診や組織診を行います。
マンモグラフィー(乳房レントゲン撮影)
乳房のX線(レントゲン)撮影のことをマンモグラフィといいます。乳腺の診断に際し非常に重要な検査のひとつです。マンモグラフィは、しこりとして触る前の早期乳がんを発見できる可能性があり、欧米ではマンモグラフィ検診により乳がんによる死亡者数を20-30%減少させたと報告されています。日本でも、平成16年、厚生労働省より「40歳以上はマンモグラフィ併用検診を行う」という通達が出されました。マンモグラフィ撮影のためには乳房内のわずかな病変も検出できる専用の撮影装置が必要になります。当院では、平成21年9月より最新鋭のデジタルマンモグラフィ撮影装置を導入しました。
  • マンモグラフィー撮影装置の写真
    • マンモグラフィー撮影装置
  • 斜位撮影の写真
    • 左乳房のマンモグラフィー(内外斜位撮影)
      矢印は乳がんのしこり
マンモグラフィは、板と板の間に乳房を引き出して圧迫し、薄く伸ばして撮影します。乳房を十分引き出すことにより、撮影範囲が増え、病変の見逃しが減ります。また、圧迫により乳腺の重なりを減らし、かつ、動きによるブレをなくすことで、正確な診断が可能になります。通常は左右の乳房を2方向から撮影し、計4枚の撮影を行います。圧迫時には多少の痛みをともないますが、正確な診断のために、専門の技師が、十分に配慮して圧迫を行います。検査中、もしもつらい場合は、遠慮せずに伝えてください。撮影にはX線を用いますが、マンモグラフィの被曝量は自然界の放射線レベルと同じくらいのわずかな量です。
マンモグラフィでは乳房内のしこりだけではなく、石灰化(せっかいか、組織内にカルシウムが沈着したもの)も鮮明に写し出すことができます。石灰化は、微細な白い点や線として写ってきます。心配のいらない良性のものがほとんどですが、がんにともなって石灰化が生じている場合があり、専門医の判断が必要です。
マンモグラフィ装置は、石灰化を対象としたステレオガイド下マンモトーム生検(後述)にも利用されます。
当院は、平成13年12月にマンモグラフィ検診精度管理中央委員会よりマンモグラフィ検診施設画像認定を受けています。安心して検査を受けてください。
  • 乳腺撮影室内部の写真
    • 乳腺撮影室内部
  • 女性専門技師の写真
    • マンモグラフィーは女性の専門技師が撮影します
超音波(エコー)検査
乳房の皮膚にゼリーを塗って超音波検査の探触子(プローブ)をあてて乳房の内部を調べる検査です。検査時の痛みや放射線被曝はありません。しこりがある場合に、しこりの形や内部の性状を写しだし、しこりの性質を推定するために有用です。触診ではわからないような小さなしこりが発見されることもあります。閉経前の女性で乳腺密度が高く、マンモグラフィでは隠れたがんを見つけにくい場合にも、超音波で発見できることがあります。一方、マンモグラフィでしか発見できない癌もあり、精密検査においては通常、両方の検査を行います。
病変が超音波検査でとらえられる場合には、超音波の画像を見ながら、細胞診検査、針生検、超音波ガイド下マンモトーム生検(後述)を行うことが可能です。
  • 超音波検査の写真
    • 乳腺超音波検査
      9mm大の腫瘤(乳がん)が写しだされている
乳管(にゅうかん)造影
乳頭から血液が混じった赤色ないし褐色の分泌物を認めることがあります。これは乳汁を運ぶ乳管という管の中に腫瘍ができたときなどに多くみられる症状です。この場合、血液の分泌を認める乳頭の穴から細いチューブをいれて造影剤を注入してレントゲン撮影をおこなう乳管造影という検査を行うことがあります。
  • 右乳房の乳管造営の写真
    • 右乳房の乳管造影写真
MRマンモグラフィー
おもに脳や骨などで行われるMRI(磁気共鳴画像法)という検査を乳房で行うものです。この検査は、乳がんがある場合には、がんの乳房内での広がりを調べるために重要な検査です。また、乳がんなどの病変があるかないか、他の検査では判断が難しい場合に、鑑別のために行うこともあります。
  • MRマンモグラフィーの写真
    • MRマンモグラフィー写真
      矢印は乳がんのしこり
細胞診と組織診(生検)
画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変や、がん(=悪性)を疑った場合には、細い針を刺して細胞を吸引・採取する細胞診や、組織そのものを採取する組織診(生検)が必要になります。いずれも、局所麻酔を用いて痛みを抑えて検査します。
細胞診検査
乳房のしこりに細い針を刺して、しこりの中の細胞を吸引・採取し、顕微鏡で良性か悪性かを診断する検査です。針の太さは注射針程度です。しこりに正確に針を刺すために超音波検査装置を使って行うこともあります。また、乳頭から血液が混じった分泌物(血性乳汁分泌)を認める場合には、分泌物を採取して細胞を調べます。細胞診は簡単にできて体への負担が少ない検査で、結果も通常翌日にわかりますが、病変によっては吸引しても細胞がとれてこない場合や、細胞だけでは良悪性の判断ができない場合があり、その際には組織診(生検)が必要になる場合があります。
  • 細胞診検査の写真
    • 細胞診の顕微鏡像
組織診(生検)
細胞診では診断が難しい場合などに、病変部の組織そのものを採取して確定診断する方法です。細胞診ですでにがんの診断がついていても、がんの性質(そのがんの持つ性格としての悪性度や、どのような治療法が有効と考えられるか)を調べて治療方針を立てる目的で生検を行うこともあります。生検には、細胞診よりやや太い針を刺して組織を採取する針生検や、もう少し太めの針で組織を吸引しながら採取するマンモトーム生検、皮膚を切開して組織を採取する切開生検などの種類があります。検査の際は、局所麻酔を用いて痛みを抑えます。ほとんどの場合は、針生検やマンモトーム生検などの針を用いた検査で、4mm以下の傷痕で終了し、検査に際して入院は不要です。検査後、診断までには7日くらい日数がかかります。
生検の具体的な方法は以下のとおりです。
針生検
超音波で確認可能な病変に対し、病変を超音波で見ながら針を刺し、針の中に細長く切り取られる組織を採取します。
超音波ガイド下マンモトーム生検
超音波で確認可能な病変に対し、病変を超音波で見ながら、マンモトームという吸引機能つきのやや太い針を刺し、組織を針の中に吸引しては切り取って採取します。針を刺すための皮膚切開は約4mmです。
  • マンモトーム本体の写真
    • マンモトーム本体
  • マンモトームプローブ(穿刺針)の写真
    • マンモトームプローブ(穿刺針)
ステレオガイド下マンモトーム生検
乳がんの中には、触診や超音波検査では異常を指摘できず、マンモグラフィ上の石灰化だけが異常所見として発見されるものがあります。このような場合、良悪性の診断のために、石灰化を含む部位の生検が必要になりますが、石灰化はしこりとして触れないため、従来の切開生検では石灰化近辺の乳腺組織を大きく切除しなければならず、身体への負担や傷痕が残るという問題がありました。この問題を解決したのがステレオガイド下マンモトーム生検です。これはマンモグラフィの撮影装置に専用の機械を取りつけることにより、撮影装置に固定した乳房の内部の石灰化の位置をコンピュータで正確に計算し、そこにマンモトームの針を刺して組織を吸引採取する検査です。皮膚切開は4mmですみ、変形も残りません。検査時間は約30分です。
  • ステレオガイド下マンモトーム生検時の検査装置の写真
    • ステレオガイド下マンモトーム
      生検時の検査装置
切開生検
正確な診断のために病変の一部ではなく全体を評価する必要がある場合などに施行します。

乳がんの治療

乳がんの治療は、手術療法、放射線療法という「局所治療(特定の部位を対象とした治療)」と、ホルモン療法、化学療法(抗癌剤治療)、分子標的治療薬(抗HER2療法)などの「全身治療(体全体に薬剤を行きわたらせる治療)」を、がんの進行程度やがんの性質、患者さんの希望に応じて、最適な組み合わせと順序で行っていきます。診断の時点で遠隔転移がない場合でも、将来の転移・再発の危険を抑える目的で、乳がんの性質に合わせた全身治療を行うことがしばしばあります。
手術療法
昔は、乳がんの手術といえば乳房のふくらみをすべて切除してしまう乳房切除術が一般的でした。しかし女性にとって乳房のふくらみや乳頭を失うことは、精神的・肉体的にたいへんな問題です。手術後の入浴のことや下着のことなど心配なことが多々あるのではないかと思われます。現在では、可能であれば部分切除にとどめ、乳房のふくらみを残す乳房温存療法が多くなってきています。
現在行われている標準的な乳がんの切除術式(手術のしかた)には、大きく分けて2種類の方法があります。ひとつは乳房温存療法である「乳房部分切除術」で、もうひとつは乳房をすべて切除する「胸筋温存乳房切除術」です。現在、日本の乳がん手術の術式は両者がおおよそ半々から乳房温存療法の割合がやや多くなってきており、当院でも同様の傾向です。当院では、乳がんの手術を受けられる患者さんの50%~60%の方に乳房温存療法を行っています。また、乳房を切除した場合、ご希望に応じ、乳房の形を形成する乳房再建も行っています。
乳房部分切除術(乳房温存療法)
乳房のしこりから約2cmの距離をおいて乳腺を円形または扇状に切除する手術です。皮膚や乳頭は切除しません。癌を取り残さないために、切除した乳腺の断端に癌がないか、手術中に、迅速病理検査(急ぎの顕微鏡診断)で調べます。断端に癌があった場合はまず追加切除を考えますが、癌が広範に広がり温存が不可能と判断した場合には、胸筋温存乳房切除術に術式を変更します。乳房部分切除術を施行した場合、乳腺のなくなった部分を補うように、周囲の組織を寄せて形を整えます。切除した分だけ若干乳房のふくらみは小さくなりますが、乳房の形はおおむね保たれます。手術後は、乳房内再発の予防のため、手術した側の残った乳腺に原則として放射線治療を行います。がんの取り残しのない(あるいは、ほとんどない)温存手術がなされ、かつ、残った乳腺に適切な放射線治療がなされた場合、生命予後(生存率)に関しては、乳房温存療法と胸筋温存乳房切除術で差がないということが、これまでの臨床試験(多数の患者さんを対象とした研究)の結果からわかっています。
胸筋温存乳房切除術
胸筋(乳腺の下にある、大胸筋や小胸筋という胸の筋肉)は残して、乳房をすべて切除する手術です。この手術では乳頭とそのまわりの皮膚も切除しますので、手術後は乳頭や乳房のふくらみがなくなります。当院では、ご希望に応じ、乳房を切除した後に乳房の形を形成する乳房再建も行っています。
腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検
乳がんがいちばん転移をおこしやすい場所は同じ側の腋窩(えきか=わきの下)のリンパ節です。腋窩に転移がある場合は、手術の際、腋窩リンパ節郭清という操作が必要になります。腋窩では、脂肪組織に埋もれて複数のリンパ節が、リンパ管でつながったネットワークをなして存在しています。郭清とは、リンパ節を含む脂肪組織をひとかたまりに切除することです。脂肪組織の中にはリンパ管だけではなく血管や神経も多数走っており、重要なものは注意して残しますが、細かいものまですべて残すことはできません。昔は、乳がんの手術の際には、一律に腋窩リンパ節郭清が行われていました。リンパ節転移の有無は術前に正確には診断できないため、転移リンパ節の取り残しを避けようという考え方です。しかし、腋窩リンパ節郭清を行った場合、リンパ液の流れが滞ることによる上肢(腕)のリンパ浮腫や、知覚神経の障害によるわきの感覚異常などの後遺症が、術後、高率に生じます。
本当は転移のない人に無用な腋窩リンパ節郭清を行わないために、現在、世界中で広く行われている方法が、「センチネルリンパ節生検」です。この方法は、腋窩リンパ節の中で乳房からのリンパ液の流れが最初に到達するリンパ節(すなわち、がんが一番転移しやすいと考えられるリンパ節)を「センチネル(見張り)リンパ節」とよび、手術時にセンチネルリンパ節(1個ないし数個)をさがしてそれだけを切除(生検=診断のために組織をとること)して、術中迅速病理検査(急ぎの顕微鏡診断)で調べ、転移がないと判断されれば、それ以上の郭清は省略する方法です。転移があった場合は腋窩リンパ節郭清を行います。センチネルリンパ節を探すために色素を用いる方法と、放射性同位元素を用いる方法、両者を併用する方法があり、当院では色素を用いています。
センチネルリンパ節生検は、腋窩リンパ節転移の有無を100%正しく反映するとは限りませんが、熟練した外科医と病理医からなるチームが行えば、ほぼ正確な診断(偽陰性率 10%未満)が可能とされ、この結果にもとづいて腋窩リンパ節郭清を省略する方法は現在の標準的治療法と考えられています。当院の平成15年から20年までの手術例の検証でも偽陰性率は6.4%と十分低く、この方法の適応(適切な対象)となりうる方に対しては、術前に説明しご同意を得たうえで施行しています。適応となるのは術前検査で腋窩リンパ節転移の可能性が低いと考えられる方です。乳房の切除術式(温存あるいは乳房切除)とは関連しません。明らかな腋窩リンパ節転移が術前からわかっている方にはセンチネルリンパ節生検は行わず、腋窩リンパ節郭清をします。
乳房再建
乳房再建には背中の筋肉(広背筋、こうはいきん)・皮下の脂肪組織・皮膚を用いる広背筋皮弁(こうはいきんひべん)と、お腹の筋肉(腹直筋、ふくちょくきん)・皮下の脂肪組織・皮膚を用いる腹直筋皮弁(ふくちょくきんひべん)の2種類の方法があります。お腹の方が背中にくらべて脂肪や筋肉が多いことから、乳房が大きい方には腹直筋皮弁を、乳房の小さい方には広背筋皮弁を用いることが多いのですが、これまでにお腹の手術を受けたことがあり、お腹に手術の痕がある方には腹直筋皮弁を用いずに広背筋皮弁を用いることもあります。また乳房再建を行う時期は、基本的に乳房を切除する手術に引き続いて行うことが多いのですが(これを「一期的乳房再建」といいます)、乳房を切除する手術を行い、退院後に再度、乳房再建の手術を受けることもできます(これを「二期的乳房再建」といいます)。また乳房再建後に、なくなった乳頭や乳輪も形成することができます。
 乳頭や乳輪は乳房再建時には形成しません。再建した乳房が安定してから(通常は手術後数ヶ月から1年ぐらいたってから)、乳頭・乳輪形成を行うことができます。これはからだの違う場所から皮膚をもってきて形成します。
当院では、乳房再建や乳頭・乳輪形成の手術は専門の形成外科医が担当します。
ホルモン療法
乳がんにはエストロゲン(女性ホルモン)の刺激を受けて増殖するタイプのもの(乳がん全体の60-70%)とそうでないものがあります。エストロゲンの刺激で増殖する乳がん細胞は、エストロゲンを受け取って取り込む受容体というものをもっており、そのようながんを、ホルモン感受性乳がんといいます。ホルモン感受性の有無は切除や生検で得られたがんの組織検査でわかります。ホルモン感受性のがんは、ホルモン療法の効果が期待できるがんです。
ホルモン療法には、大きく分けて、体内のエストロゲンの量を減らす方法(LH-RHアゴニスト製剤やアロマターゼ阻害剤)と、がん細胞がエストロゲンを取り込むのを邪魔する方法(抗エストロゲン剤)があります。閉経前の女性では、エストロゲンは主に卵巣で作られます。LH-RHアゴニスト製剤は、卵巣からのエストロゲン分泌を抑えてエストロゲン量を減らす注射薬です。一方、閉経後にはエストロゲンは卵巣では作られなくなり、副腎皮質から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)が、脂肪組織などにあるアロマターゼという酵素によってエストロゲンに作りかえられます。アロマターゼ阻害剤は、閉経後の方で、アロマターゼの働きを阻害することによりエストロゲン量を減らす内服薬です。また、抗エストロゲン剤はがん細胞のエストロゲン受容体に結合することにより、エストロゲンの取り込みを邪魔する内服薬です。
ホルモン感受性の乳がんの場合、術後の治療としてこれらホルモン療法を施行することで、転移・再発を約半分に減らすことができます。また、進行・再発乳がんではがんの進行を抑える効果があります。
化学療法(抗癌剤治療)
乳がんに対し化学療法をおこなう目的は大きく分けて2つあります。1つは、乳がんの手術後に再発を抑えて根治を目指す、初期治療としての使い方です。もう1つは、すでに転移のある方や再発された方に対し、がんを縮小させ、症状を緩和し、生活の質を向上させ、延命をもたらす目的で行う治療です。乳がんに対して用いられる抗癌剤には、多くの種類があり、それらを組み合わせて用いることもよくあります。点滴投与のものも内服のものもありますが、乳がんの抗癌剤治療は、通常は外来で行われます。代表的な抗癌剤治療には以下のようなものがあります。
  • FEC療法
    • フルオロウラシル・エピルビシン・シクロフォスファミドの3つの抗癌剤を組み合わせて行う治療で、頭文字をとってFEC療法といいます。一般に腋窩リンパ節に転移がある場合の手術後の補助療法や手術後の再発時に行うことが多い治療です。
  • CMF療法
    • シクロフォスファミド・メソトレキセート・フルオロウラシルの3つの抗癌剤を組み合わせて行う治療で、頭文字をとってCMF療法といいます。おもに手術後の補助化学療法として行います。
  • タキサン系抗癌剤
    • ドセタキセルという薬とパクリタキセルという薬があります。一般には手術後の再発時に使われることが多い薬です。
分子標的治療
がん細胞は正常細胞と異なり、際限なく増殖し続けるという性質があります。従来の抗がん剤はがん細胞も正常細胞も区別なく、増殖が盛んな細胞を攻撃する薬剤です。そのため、白血球や消化管粘膜、毛髪の細胞など、増殖が盛んな正常細胞に広くダメージを与え、結果としてさまざまな副作用が出ます。最近、がん細胞に特徴的な特定の因子をみつけてそこを狙い撃ちする、「分子標的治療薬」とよばれるタイプの薬剤が各種開発されてきています。分子標的治療薬は、その薬特有の副作用もありますが、一般には、抗がん剤より副作用の程度は軽いとされます。
乳がんで使用される代表的な分子標的治療薬はトラスツズマブ(商品名 ハーセプチン)です。ハーセプチンは、HER2(ハーツー)と呼ばれるタンパクを細胞の表面に持っているタイプの乳がん(HER2陽性乳がん)に効果がある点滴薬です。HER2タンパクは、がん細胞表面にあって、細胞に増殖の司令を出します。ハーセプチンはこのHER2タンパクに結合して邪魔をする抗体の薬で、がん細胞の増殖を抑えます。また、ハーセプチンの結合したがん細胞は、免疫細胞に攻撃されて破壊されます。HER2陽性かどうかは、切除や生検で得られたがんの組織検査で判定されます。ハーセプチン治療の適応となるHER2陽性乳がんは乳がん全体の約25%です。
ハーセプチンも、その使用目的は、術後の再発抑制目的と、進行・再発乳がんの治療目的の2つに大きく分けられます。術後再発予防のハーセプチン療法は平成20年に保険承認されました。HER2陽性の乳がんではハーセプチンと抗がん剤を組み合わせて使用することで、再発の危険性を約半分に抑えられます。再発予防の場合、ハーセプチンは3週間に1回、1年間点滴します。進行・再発乳がんでは、ハーセプチンは、単独、あるいは抗がん剤と組み合わせて、1週間に1回、点滴します。近年の分子生物学の進歩により、ハーセプチン以外にも、新規の分子標的治療薬が複数開発されており、今後、使用が広がるものと思われます。
放射線療法
乳房温存療法を行った場合には、温存乳房内の再発を抑制する目的で、手術をした側の残っている乳腺に放射線を照射します。目に見えるがんは手術で取り除きますが、温存乳房内にわずかに残っているかもしれない目に見えないがん細胞を、放射線によって根絶やしにすることをめざします。一般に乳房温存療法後に放射線療法を加えることにより、乳房内再発が約1/3に減ることが知られています。高齢でホルモン療法が有効ながんの方のようにもともと再発の危険が低い場合には、乳房温存療法後の放射線治療の有無による乳房内再発率の差が小さく、放射線治療を省略できる場合もあると考えられています。しかし、基本的には、乳房温存療法は、適切な放射線療法と組み合わせることによってはじめて胸筋温存乳房切除術と同等のがんの制御が得られる治療法です。通常は50~60グレイという放射線の量を25~30回(1日1回、週5日で5-6週間)に分けて行います。放射線を照射する際には痛みや熱さはありません。治療は外来通院で可能です。
この他、胸筋温存乳房切除術後であっても、再発の危険が高いとき(腋窩リンパ節に多数の転移があった場合など)には、胸壁や、鎖骨上窩(鎖骨の上のくぼみの部分)のリンパ節に、再発予防目的で放射線照射を行う場合があります。
放射線療法は、再発したがんの治療として行われる場合もあります。胸壁やリンパ節でのがんの局所再発の際に、全身治療との組み合わせを考えながら、状況に応じた局所治療として照射を行うことがあります。原則として、過去に放射線照射した同じ部位に再び照射することはできません。骨への転移で痛みや骨折の危険がある際にも、放射線治療が有効な場合があります。脳転移の治療にも、放射線はしばしば用いられます。

ひまわりの会

当院には、乳がんで手術を受けられた患者さんや当院の看護師・医師よりなる“ひまわりの会”という会があります。会員の方は、当院で手術を受けられた方ばかりではなく、他の病院で手術を受けられた方もいらっしゃいます。この会では、“ひまわり通信”の発行、1年に4回の定例会、レクリエーション、月に1度のおしゃべり会の開催を行っています。定例会では、その会ごとにテーマをもうけ、当院の医師・看護師・技師による講演や院外からの講師を招いての講演を行っています。テーマは乳がんに関することばかりではなく、会員の皆さんの関心事などいろいろです。講演後はおしゃべり会を行い、ざっくばらんにお話をしていただく時間ももうけています。ふだんから疑問や不安に思っていることなど、お話していただければと思っています。この会の年会費は2,000円です。入会をご希望される方や、さらに会について詳しくお聞きになりたい方は、当院、外科・乳腺外科外来の看護師までご相談ください。

自己検診

乳房は自分で触れることができ、自己検診が最も可能な部位のひとつです。以下の方法で自己検診をやってみてください。
触診は、すわった状態(または立った状態)とあおむけに寝た状態で行います。すわった状態で触診する時は、お風呂に入った時に行い、少し石鹸をつけてすべりやすくした方が触りやすくなります。あおむけで触診する時には、触診する側の腕を頭の方にあげて、反対の手で触診するとわかりやすくなります。触診は人差し指から小指の4本の指を伸ばした状態で、指の腹を用いて、あまり力をいれないようにして触れてしこりを探します。指で乳房をつかむように触診すると、正常な乳腺をしこりと間違うことが多いので注意が必要です。自己検診は月に1回、閉経前の方なら月経が始まってから1週間後ぐらいに、閉経後の方なら覚えやすい日を決めて行ってください。そして以前になかったしこりを見つけた場合には、自分で判断せずに外来を受診してください。

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