病理解剖(剖検)についてのお願い

病理解剖(剖検)についてのお願い

この度,ご親族が亡くなられましたことを,衷心よりお悔やみ申し上げます.患者さまの命を守ることができず,まことに遺憾です.
当院では,不幸にして亡くなられた患者さまのご遺体を病理学的に検証することで,病気の真実を学び,それを今後の医療に役立てるため,ご遺族の皆さま方には患者さまのご遺体の病理解剖(剖検)を承諾していただきたくお願い申し上げております.ご遺体の剖検は解剖資格を有する当院の病理専門医が行います.なお,脳解剖(開頭)は必要があっても承諾なく行うことはありませんし,拒否することも可能です.

病理解剖(剖検)の目的と意義

  1. ご生前の診断を確かめる.
    近年,高度な医療技術により,正しく診断できる率は著しく高まりました.しかし,すべての病態が解明されているわけではなく,死後剖検ではじめて見つかる病気や異常は少なくないと報告されています.ご生前の診断が正しかったかどうかを,剖検で確かめ,後日,病理組織学的に最終確定診断を受けます.
  2. 死亡の原因を確かめる.
    患者さまがどのような原因,経過で亡くなられたかを明らかにすることができます.とくに死因の不明な急死時など,剖検で可能な限りその死亡原因を究明する必要があります.
  3. 治療の効果をみる.
    臨床では常に最善を尽くし最高の治療を目指していますが,その治療が実際にどのように効いたのか,またどの程度効いたのかを確かめます.
  4. 医療や医学の進歩に役立てる.
    剖検で判明した所見はすべて貴重な医学的データとして,日本病理剖検輯報(国内で行われたすべての剖検症例の記録・集計)に登録され,日本の医療の進歩に大きく貢献しています.また,ご遺族の方々にも役立つ情報が得られる場合もあります.

病理解剖(剖検)の内容と結果説明

  1. ご遺体の剖検は死体解剖資格を有する当院の病理専門医が行い,礼意を失することがないよう丁寧に行われます.要する時間は約2時間です.着衣により,剖検の傷は外見上目立たないよう配慮いたします.
  2. 剖検終了時に主治医から肉眼的な結果をご説明させていただきますとともに,病理組織学的検索ならびに臨床病理学的検討が終了した時点で,最終結果を改めてご報告させていただきます.患者相談室からご連絡差し上げますので,皆さまのご希望に添って説明いたします.
  3. 剖検では主要臓器から目的に必要な肉眼標本と組織標本を作製します.肉眼標本は5年間保存され,その後礼意を失することなく荼毘にふされます.組織標本は半永久的に保管されます.
  4. 診断結果は個人情報(お名前など患者さま個人を特定する情報)保護に配慮して,日本病理剖検輯報に登録いたします.
  5. 病理標本や診断結果は医学教育,学会・誌上発表,医学研究に使用させていただくこともあります.学会・誌上発表の際には個人情報は公開されません(お名前など患者さま個人が特定できないようにいたします).医学研究で使用する場合は別に富山市立富山市民病院倫理委員会の審査を受けます.また,いつでも申し出により拒否することができます.患者さまやご遺族の皆さまのプライバシーは厳守されますのでご安心ください.
  6. このような病理解剖(剖検)の意義を十分ご理解いただき,家族のみなさまのご承諾を頂けますことを重ねてお願い申しあげます.


富山市立富山市民病院 院長