無痛分娩

イラスト.pngバナー.png ←ここをクリックすると動画が見れます https://youtu.be/uL4pEVPlfX0

当院では2010年から麻酔科医の協力を得て、硬膜外麻酔を用いて分娩時の産婦さんの痛みを緩和する無痛分娩を行っています。

 出産時の痛みは、子宮の収縮そのもの(主に分娩第一期の痛み)と、赤ちゃんが狭い産道を通る際にその周りが引き延ばされることで発生するもの(主に分娩第二期の痛み)とがあると考えられています。一部の研究では、その痛みは骨折より強く、手の指を切断した痛みに匹敵するともいわれています。これを麻酔薬で生理痛かそれ以下程度まで和らげるのが無痛分娩であり、完全に痛みがなくなるわけではないため和痛分娩と称する施設もあります。

 麻酔といっても眠るための麻酔ではなく、背中から痛み止めの麻酔の注射を行います(硬膜外麻酔)。脊椎の中の硬膜外腔というスペースに細い管を挿入し、そこから局所麻酔薬を注入します。当院では、薬剤の注入は機械により時間ごとに自動的に投与されますが、それに加えて産婦さんが助産師と相談しながら薬剤を追加投与することもできますので、自分のお産の進行に沿った痛みのコントロールをすることができます。硬膜外麻酔は、全身に麻酔薬を投与する方法とは異なり、狭いスペース(硬膜外腔)にいれるため薬剤は少量で済み、赤ちゃんへの麻酔薬の影響は小さく、問題にならないことがほとんどです。

硬膜外麻酔では痛みの神経はブロックしますが、下半身の運動神経を完全に遮断するわけではありません。ですから、出産の痛みはコントロールされていても(痛みの感じ方には個人差があります)、自分の力でいきむことができ、子宮が収縮してお腹の張る感覚や、赤ちゃんが生まれてくるときの感触もしっかり味わうことができます。出産時の痛みが和らぐため、痛みで取り乱すことなく落ち着いて新しい家族を迎えることができます。また、陣痛の痛みをこらえることで起こる体力の消耗を避けることができ、その分母体疲労が少なく産後の育児をスムーズに開始できることにもつながります。

過去に無痛分娩中に起きた事故の報道があり、無痛分娩に不安を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。確かに医療行為である以上、いくらかの副作用・合併症が起こる可能性はあります。しかし、当院では硬膜外麻酔の経験が豊富な麻酔科医が全例の無痛分娩を担当し、スタッフ間で定期的な勉強会も行うなど、"もしも"の時にも迅速で適切な対処ができるよう努めています。

当院では、12カ月に1回程度無痛分娩教室を開催しています。麻酔科医より無痛分娩についての説明を行い、妊婦さんからの質問にもお答えします(スタッフから無痛分娩を強要することはなく、普通分娩や帝王切開にも対応しています)。"無痛分娩"という選択肢を考慮されている方は、ぜひ一度ご来院ください。

●無痛分娩の診療実績

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●当院での無痛分娩について(硬膜外無痛分に関する説明書

●入院中のスケジュールについて(診療計画書

●麻酔は当院麻酔科医師が担当しています(麻酔科医師紹介

●麻酔科医の無痛分娩に関する経歴と研修履歴   2022年4月現在

永川保

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 12年(2011年から)

 ・新生児蘇生法NCPR 一次コース 受講 2017

松浦康荘

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 11年(2012年から)

 ・新生児蘇生法NCPR 一次コース受講 2017

 ・J-CIMELS(日本母体救命システム普及協議会) 主催

  母体急変時の初期対応ベーシックコース受講 2019

 ・J-CIMELS(日本母体救命システム普及協議会) 主催

  母体急変時の初期対応ベーシック・インストラクターコース受講 2019

本田康子

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 1年(2022年から)

清水美彩子

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 3年(2020年から)

津田翔

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 5年(2016年から)

篠田正浩

 ・麻酔科専門医、標榜医

 ・無痛分娩経験年数 4年(2019年から)

真鍋優希子

 ・麻酔科標榜医

 ・無痛分娩経験年数 1年(2022年から)

  • 急変時の対応について

・母児の状況により緊急帝王切開や児の管理が必要と考えられる場合には、麻酔科や小児科と速やかに連携して対応しています。
・母体に集中治療が必要とする場合はICUで治療を行います。
・必要に応じて富山大学附属病院や富山県立中央病院へ母体搬送や新生児搬送を行っています。

・無痛分娩で用いる硬膜外麻酔に関連した合併症(高位脊椎麻酔、局所麻酔薬中毒)に対する危機対応シミュレーションを産科医、麻酔科医、助産師が参加して定期的に実施しています。硬膜外麻酔に関連して起こりうる合併症の初期症状を早めに認知し、その対応を学ぶことを目的に行っており、無痛分娩の安全な提供体制の構築に努めています。(最終の危機対応シミュレーショントレーニングは2022年10月19日に実施しました。)

  • 産科医の救急蘇生への取り組み(無痛分娩の安全な診療のための産科医の講習会受講履歴)

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  • 日本産婦人科医会偶発事例報告・妊産婦死亡報告事業へ協力しています。

  • 過去(20202021年)に当院で無痛分娩によりお産をされたお母さん方(任意で回答していただいた82名)からいただいたアンケートの結果の一部を記載しましたので、参考にしてください。

Q1)当院で無痛分娩を希望された理由を聞かせてください。

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Q2)無痛分娩に期待していたことは何ですか?

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Q3)分娩の開始から出産の姿勢になるまで(主に分娩第1期)に感じた痛みを10点満点(0点を『痛みがない』、10点を『想像できる最も強い痛み』として)で教えてください。

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Q4)出産の姿勢になってから出産まで(主に分娩第2期)に感じた痛みを10点満点(0点を『痛みがない』、10点を『想像できる最も強い痛み』として)で教えてください。

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無痛分娩中の痛みの強さの中央値(平均値)は主に分娩第1期が3点、主に分娩第2期が5.5点でした。

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Q5)無痛分娩の満足度を10点満点(0点を『非常に不満』、10点を『非常に満足』として)で教えてください。

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 無痛分娩の満足度の中央値(平均値)は9点でした。

Q6)またお産をすることがあれば無痛分娩を希望しますか?

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82人中80人の方が次回も無痛分娩をすると回答されました。

お産の痛みの感じ方は様々で、無痛分娩経過中ほとんど痛みを感じていない産婦さんがいる一方で中等度以上の痛みを自覚されている産婦さんもおられます。しかし、大部分の産婦さんが無痛分娩を選択したことに満足しておられ、機会があれば次回も無痛分娩でのお産を希望されています。これには無痛分娩の満足度には単に痛みの強さだけでなく、強い痛みを感じていた時間の長さ、体力温存ができたかどうか、時間外の対応、前回のお産との比較、産婦さんと医療スタッフとの関わり、医療スタッフ相互の連携などといった、痛みの強さの数値だけでは推し量れない要因が複数関係していることにあるようです。富山市民病院はこれからも安全、安心なお産と無痛分娩を提供していけるように、チーム医療で取り組んでいきます。

  • 最終改定日 2022年10月24日