腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

腹部大動脈瘤の治療法としては、腹部を大きく開腹して大動脈瘤を人工血管で置換する人工血管置換術が一般的に行われています。この手術は遠隔期の安全性が確立されている確実な治療法ではありますが、高齢な方や大きな持病を持っておられる方や、過去に腹部の手術を受けられたことのある方では手術のリスクが高くなります。
最近登場した腹部ステントグラフト内挿術という手術方法は、両足の付け根の大腿動脈から大動脈瘤の存在する部分に人工血管装填した特殊なカテーテルを挿入し、大動脈瘤部分にステント付き人工血管を動脈内から固定してきます。このステント付き人工血管をステントグラフトといいます。この方法であれば太ももの付け根の部分に小さな切開(4~5cm)を入れるだけで治療ができ、他の部分は切開する必要がなく、患者様の負担が少なく済みます。大動脈瘤は切除されずに残りますが、多くの場合で大動脈瘤はステントグラフトにより蓋をされることで血流が無くなり、破裂を予防できます。ステントグラフト内挿術は人工血管置換術と比べて、体に負担が少ない手術方法として急速に普及してきました。
このステントグラフト内挿術はどこの病院でも実施できるわけではなく、実施基準を満たした施設で実技のトレーニングを受けた医師のみ実施することができます。富山市民病院では2015年から、腹部ステントグラフト内挿術を施行できる施設となり、実際に手術を行っております。人工血管置換術を選択するかステントグラフト内挿術を選択するかは、大動脈瘤の形態や患者さんの基礎疾患・並存症ADLの程度などにより決定されます。