統合失調症

この病気は、以前には精神分裂病と言われましたが、精神が分裂すると誤解されやすいので病状を適切に表現するものとして「統合失調症」と呼ばれるようになりました。統合失調症は約120人に1人の発症で、日本では約76万人が治療を受けており、決して珍しい病気ではありません。また、20万人が入院して治療を受けています。
症状は、すぐに気づきやすい幻覚や妄想と、注意しないと分かりにくい、活動性の低下や引きこもりがあります。過敏で漠然とした不安だけが続き,統合失調症の治療がなされず苦しんでいる場合があります。また、幻覚(幻聴)や妄想が生じても、初期には強い現実性に圧倒されて混乱することが多いのですが、時間の経過につれて現実の声と区別出来るようになり、治療によって症状がかなり軽減される場合が一般的です。
原因は不明ですが、神経から神経に情報を伝える神経伝達物質の乱れがあり、過剰になっている部分と反対に減少している部分が想定されています。薬物療法はこの乱れを調節しています。遺伝を心配される向きもありますが、色盲に認められる遺伝形式はとりません。例えば遺伝子が全く同じである一卵性双生児でも、病気の一致率は50%以下です。親の育て方が悪いためという証拠もありません。
この病気の経過は、発病して2~6ヶ月の急性期のあと、安定化する時期を向かえます。しかし、疲れやすい、集中できない等の生活上の障害を残すこともあり、神経を徐々に社会の風に慣らしていく場(デイケア、作業所など心理社会的治療)が重要となります。
治療は、薬物療法、心理社会的治療や精神療法が重要です。特に薬物療法については、症状が良くなるとどうしても薬を止めたくなります。しかし、服薬の中断により再発することが多く、服薬は経過を左右する重要な要因です。症状消失してから最低1年は服薬を維持し、その後徐々に減量していく慎重な対応が欠かせません。近年、副作用の少ない新薬(非定型抗精神病薬)が出ていますので、以前と比べて、副作用による生活障害を少なくして服薬の継続がしやすくなっています。当科では、心理社会的治療にも力を入れています。患者さんやその家族に対し、心理教育プログラムも実施しています。
急に精神状態が悪くなり、奇妙な言動や自殺・暴力の危険が感じられた場合に、通院している病院に早めに相談されることが大事です。通院先がなければ、医療機関や保健所、時に警察の援助が必要となることがあります。富山県では精神科救急システムが稼働しており24時間の対応が可能となっています。