原発性肺がん

肺および気管支から発生したがんのことを原発性肺がんといいます。各種のがんの中でも「肺がん」の罹患(りかん=病気にかかる)率は第3位、死亡者数は、1998年以来第1位となっています。また最近は、女性で非喫煙者にも腺がんに罹患する患者さんが増えてきています。予後が悪いと言われる肺がんですが近年の画像検査と手術テクノロジーの進歩によってその成績は改善されてきています。例えば胸部のCT検査画像はより高解像度となり、淡い、あるいは小さな病変のうちに診断ができるようになりました。治療においても手術ではより低侵襲(ダメージが小さい)な胸腔鏡手術の普及によって、手術による合併症や術後の患者さんが受ける悪影響が大幅に低下しました。その結果、より早期の状態で手術を受けられた方の5年生存率は80%を超えるところまで改善しました。一方、進行した肺がんに対しても手術前後の補助療法(放射線治療や化学療法)と手術との組み合わせや、分子標的治療などの進歩により従来では治療が困難であったような病態でも治癒に至ることが増えてきました。基本的には早期のがんでは手術を第一選択とし、比較的進んだがんの場合には化学療法(放射線同時治療)の後、完全切除の可能性があれば手術を、かなり進行した状態の場合には原則的に化学療法が治療の基本となります。
近年ではがん組織の遺伝子を直接調べることで、特定の遺伝子に変異があった場合にはその遺伝子を標的として治療する「分子標的治療」が登場しました。効果が期待できる場合には再発の予防に使用されたり、従来の抗がん剤治療よりも先んじて治療適応になる場合もあります。これらの多角的な治療コンビネーションにより肺がん治療はより患者さん個々に適応したテーラーメード型に向かいつつあります。