気胸

気胸とは、何らかの理由により肺の表面を覆っている「胸膜」いう膜が破綻して肺内の空気が胸腔(肺を収納する空間)に漏れ出ることによって肺自体がしぼんでしまう病気のことです。気胸には胸膜のもろい部分が徐々に膨れていき(ブラと呼ばれます)これが破裂することによって起こる自然気胸、外傷が原因で発生する外傷性気胸、肺の別の疾病が原因となって胸膜が破綻する続発性気胸、女性の生理周期に伴って発生する月経随伴性気胸など、原因によっていくつかの分類があります。
若年者の自然気胸の多くは成長期に体格が急激に縦方向に伸びることによって、肺尖部(肺の最も上部)がより先鋭化し、強い圧力が加わることによってブラと呼ばれる風船状の嚢胞が形成され、破裂すると考えられます。マヨネーズなどの容器を押すとどこに最も強い力が作用するかをご想像いただくと理解がしやすいかと思います。一方で、高齢者の自然気胸ではブラの破裂ではなく、じん肺や線維化肺などで肺胸膜が硬くなってひび割れるように避けて起こる気胸もあります。こちらは古いゴム版を想像していただくと理解しやすいかと思います。
気胸に対しての治療は、①縮んだ肺を再拡張させて呼吸を安定させる作業と②破綻した部位を閉じて空気漏れを塞ぐ作業に分かれます。これら二つの作業を一度に行うのが手術、①に対しては持続ドレナージ、②に対しては癒着療法があります。軽度の気胸では持続ドレナージのみで生体の自然治癒力により治る場合があります。しかし、持続ドレナージでも良くならない場合、明らかなブラが確認された場合、ブラ内の感染が契機となっている場合、気胸が再発した場合などは手術を行うことが強く勧められます。